備忘録

ー 経済概観、読書記録等 ー

2008-01-01から1年間の記事一覧

稲葉振一郎「「公共性」論」(2)

「公共性」論作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2008/03メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 175回この商品を含むブログ (70件) を見る(過去のエントリー) 稲葉振一郎「「公共性」論」(1) 「よき全体主義」の可能性 話を続けます。これ…

稲葉振一郎「「公共性」論」(1)

「公共性」論作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2008/03メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 175回この商品を含むブログ (70件) を見る 「公共性」について 本書では、ハーバーマス、アレント、アガンペンらの議論をたどりながら、「公共性…

フィリップス・カーブ三題

西田小百合、張忠任「マクロ経済における期待の役割−近似合理的期待を考慮したフィリップス曲線に関する考察−」(島根県立大学総合政策論叢2006.3) 期待インフレ率(カールソン・パーキン法)に近似合理性の仮定をおいた期待修正フィリップス・カーブの推計…

トムソンロイター・ノーベル賞予想→ポール・クルーグマン受賞!

個人的には、今年は米国人以外ないし「非正統派」の経済学者から選出されるような気がします。(追記) 既報の通り、ポール・クルーグマン氏が受賞。詳しい情報はまだ。本ブログでの関連情報はこちら。 for his analysis of trade patterns and location of …

田中秀臣「上げ潮派ってなんでしょ?」(週刊ビジスタニュース)

「上げ潮派」とは何か、またその理論的背景に関するとてもわかりやすい解説。 日本型は[本家アメリカのサプライサイド経済学とは]どうも一味違うようだ。その原因は「暗黒卿」もとい高橋洋一教授の斬新な着眼点とアイディアに依存している。埋蔵金を利用す…

2008年8月データによる更新

今月は、インフレ率が横ばいの中、完全失業率は悪化。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は前年同月と同水準(前月0.2%増)。今後は、インフレ率は緩やかに低下し、完全失業率はしばらく悪化が続くと考えられる。 フィリップス・カーブは、以前指…

ELLE、経済ブログ15選

http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/20080924#p3 選定いただき有難うございます\(*^▽^*)/

James Hamilton“Paulson bailout”(Econbrowser)

And I agree with the Financial Stability Forum that the key changes we need to make to avoid such problems are more transparency in accounting and stronger capital requirements. Transparency is vital so that that creditors, shareholders, f…

岡田靖「米金融危機、最悪ケースでは現金への逃避現象健在化へ」(ロイター・インサイト)

韓リフ先生経由。金融危機によってリスク回避行動が高まる場合、伝統的な金融政策の有効性は急速に失われ、テイラー・ルールに従うことは必ずしも正しいものとはいえなくなる。最悪の場合、換金性の高い資産が一斉に売却され、現金への逃避が生じることも考…

大森義明「労働経済学」

労働経済学作者: 大森義明出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2008/03/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 38回この商品を含むブログ (4件) を見る 最新の教科書 労働経済学に関する最新の教科書であり、以下のような内容について、図を用いた説明でわ…

ロバート・B・ライシュ「暴走する資本主義」

暴走する資本主義作者: ロバートライシュ,雨宮寛,今井章子出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2008/06/13メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 170回この商品を含むブログ (95件) を見る 「超資本主義」とは何か 原題は"Supercapitalism - The Transfo…

2008年7月データによる更新

コスト・プッシュ・インフレが継続。インフレ率は、ついに2%を超えた。完全失業率は一時的に改善しているが、有効求人倍率の動向は弱く、雇用者数は製造業を中心に減少。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は0.2%増(前月0.1%増)。 今後は、イ…

郵政選挙から参議院選挙までの政治過程を考える

小泉政権下で行われた2005年9月の郵政選挙の自民党の大勝から、2007年7月の参院選での大敗までの2年間、どのような変化があったのだろうか。これをB・フライのいう政治経済学的な含意から、うまく説明することができるだろうか。 マクロ経済的には、この…

ブルーノ・S・フライ「新しい経済学 ポリティコ・エコノミックス入門」

新しい経済学―ポリティコ・エコノミックス入門 (1980年)作者: B.S.フライ,加藤寛出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 1980/03メディア: ? クリック: 9回この商品を含むブログ (1件) を見る これまでの経済学と新たな政治経済学 B・フライによる1978年の…

ダニエル・C・デネット「自由は進化する」

自由は進化する作者: ダニエル・C・デネット,山形浩生出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2005/05/31メディア: 単行本購入: 14人 クリック: 99回この商品を含むブログ (257件) を見る 決定論/非決定論 デネットは両立論、つまり、決定論的な世界と自由意志は…

2008年6月データによる更新

コスト・プッシュ・インフレが継続する中、雇用情勢は悪化の懸念。将来的には、右下方向へのポイントの異動がはっきりしてくるだろう。ちなみに、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は0.1%増(前月0.1%減)。 最適金融政策は、下に示される厚生損…

労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(4)

(過去のエントリー) 労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(1) 労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(2) 労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(3) 承前。 これまで、労働生産性(就業者1人当たりの国内総生産)の変動…

川本卓司、笛木琢治「景気循環要因を取り除いた生産性の計測 ―2000年以降の上昇とその背景、分配面への影響―」(日銀レビュー)

生産関数を用いた生産性の計測は「労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(2)」で行ったが、04/17付けの上記日銀レビューをこの関連で紹介する。 TFP成長率の計測 まず、全要素生産性(TFP)成長率の計測について。TFP成長率は、先日のエ…

労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(3)

(過去のエントリー) 労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(1) 労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(2) 承前。 前回は、実質賃金を決定する原動力である労働分配率を、生産関数アプローチによって分析したが、その結果を簡潔に整…

労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(2)

(過去のエントリー) 労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(1) 承前。 前回は、実質賃金(貨幣の購買力を加味した実質的な賃金水準)の増減率について1970年代から現在までの推移を概観し、実質賃金増減率は1970年代と比較して現代では明らかに…

労働生産性、労働分配率と生活水準に関する考察(1)

ちょっと前になるが、賃金上昇率と物価上昇率の関係が話題になった。日本経済は、1970年代に記録的なインフレを経験したが、その当時の賃金上昇率はそれ以上に大きかった。その一方、マイナスの物価上昇率が続いた1990年代後半以降、賃金上昇率はマイナスと…

二つの「自己欺瞞」論

08/06/24付けエントリーの続き。追記の田中先生のエントリーより。 ポール・クルーグマン「経済学者は進化理論家から何を学べるだろうか」 ポール・クルーグマン「お笑いバイオノミックス:インチキ経済学とインチキ進化論の遭遇」 上記の記事では、経済学で…

2008年5月データによる更新

コストプッシュ型の物価上昇が一段と鮮明に。今後の雇用情勢は、引き続き悪化の懸念。なお、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合は、前月と同じく0.1%減。

安富歩「生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却」

生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却 (NHKブックス)作者: 安冨歩出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2008/03/26メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 11人 クリック: 245回この商品を含むブログ (70件) を見る 「道具主義」としての現代経済学 韓リ…

畠山清行「何も知らなかった日本人 戦後謀略事件の真相」

何も知らなかった日本人―戦後謀略事件の真相 (祥伝社文庫)作者: 畠山清行出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2007/07/01メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 54回この商品を含むブログ (3件) を見る 日本の戦後政策の背後関係 本書は1976年に刊行されたものの再…

高橋洋一「さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白」

さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白作者: 高橋洋一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/03/19メディア: 単行本購入: 18人 クリック: 545回この商品を含むブログ (146件) を見る すべての道はローマに通ず 小泉政権による郵政民営化、政策金融改革…

東浩紀「動物化するポストモダン オタクから見た日本社会」

動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)作者: 東浩紀出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/11/20メディア: 新書購入: 42人 クリック: 868回この商品を含むブログ (599件) を見る オタク系文化の「構造」 日本における(狭義の)ポ…

稲葉振一郎「モダンのクールダウン 片隅の啓蒙」(2)

モダンのクールダウン (片隅の啓蒙)作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2006/03/28メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 5人 クリック: 62回この商品を含むブログ (75件) を見る 「公共性」の可能性? 本書は、文化論的な立場から「公共性」…

稲葉振一郎「モダンのクールダウン 片隅の啓蒙」(1)

モダンのクールダウン (片隅の啓蒙)作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2006/03/28メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 5人 クリック: 62回この商品を含むブログ (75件) を見る第1章 ポストモダンとは何(だったの)か 大衆社会論のいかが…

高度経済成長期の日本に対する批判的な視線

以下は、吉見俊哉「万博幻想」より。 大阪万博の華やかさと日常風景のへの浸透、会場での圧倒的な人の濁流、その華やいだ幻想に向けられる殺気立った熱気のなかで踏み潰されていった貧しき人生、そして失われる幼い命─。一九七〇年という戦後日本史の中の重…